賛 否 両 論

   2017 年2月にリリースしたデア・リング東京オーケストラの第5弾(NF26806)への評価が出揃いました。

 本にしろCDにしろ、出版し発売されたと同時に著者や演奏者、制作者の手を離れ、自由に批評に晒されます。まさにまな板の鯉です。

 

 第5弾は。モーツァルトのヴァイオリン協奏曲第5番(ジョセフ・リン=ヴァイオリンと指揮=ジョセフ・リン)と交響曲第29番(西脇義訓=指揮)を収録していますが、ここでは交響曲への評価を中心に取り上げます。

 

 まず「レコード芸術」は協奏曲のジャンルで取り上げられましたが、相場ひろさんは協奏曲ではなく交響曲から書き起こされました。

 

 「交響曲第29番はオクターヴの音程跳躍にテヌートを利かせた節回しに始まり、レガート重視の歌わせ方を基調に音楽を進めていく。

 細部がよくフレンドするというよりはややもやついた 印象があるのは、残響を豊かに採り入れた録音のせいか、それとも合奏の性格なのだろうか。全体に合奏の語彙として、発音がポルター卜ぐらいからレガートまでに制限されている感じかあって、歯切れのよい発音を欠いて響きがやや一様に均されており、楽想の対比が不明瞭であるなど、音楽としてメリハリに欠けるのは否めない。特に第3楽章以下でその印象が強いのは残念だ。」

                     相馬ひろ「レコード芸術」4月号(抜粋)

 

 次に音楽現代の保延裕史さんの評は、相場さんとは対照的ですが、ここまで聴き取れる人がいることに正直驚きました。

 

 「交響曲では響きがぐっと陰翳を帯びたものになった。それは指揮者の解釈がメンバ—に浸透した結果なのだろう。全曲はレガートに徹した柔和で穏やかな表現で一貫しており、この作品の優雅な性格にはまことに相応しく魅力的な演奏である。」

                                                                 保延裕史「音楽現代」4月号(抜粋) 

 

 さらに「無線と実験」で平林直哉さんは次のように書かれました。

 

 「交響曲は西脇の指揮。特殊なオーケストラ配置は従来通り。オーケストラの自然な響きを大切にした演奏だが、全体的な響きの豊かさ、暖かさには心がなごむ。最新録音の多くは、いかにも冷たく無機的な感じがすると思っていたが、このディスクは、決してそうではない。やはり、最新技術が悪いのではなく、録音する側の感性の問題なのだろう。」

                     平林直哉 「無線と実験」4月号(抜粋)

 

 また、ネット上のコラム「許光俊の言いたい放題」でも取り上げていただきました。

 少し長いですが、一部を引用させていただきます。

 

 「西脇は長い間レコード業界で生きてきた人である。その点ではプロである。だが、長い間演奏にも情熱を持っていたとはいえ、演奏のプロとは呼べまい。その彼が、バイロイト祝祭劇場に触発され、理想の響きを求めて独自に編み出したのがこのオーケストラ独自の配置。

 モーツァルトの交響曲第29番を聴いて、驚いた。まるでベーム指揮ウィーン・フィルをムジークフェラインザールで聴いているような、黄金の響きがするではないか。

 まずテンポが実にいい。この作品は、モーツァルトが書いた音楽の中でも、簡潔でいながらなんとも言えない微妙な美しさを持つ名作だが、テンポとフレージングが適切でないと、たちまち魅力を失う。その点、西脇はまったく正しい。ベームよりは若干速いが、決して速すぎず、じっくりしているのに、停滞感がない。ちなみに、この曲の第1楽章はアレグロ・モデラート。

 第2楽章はさらにすばらしい。桃源郷の美しさ、夢のような美しさだ。西脇の音楽には、実に上品な艶っぽさがある。淡々としているようで味がある。単調ではなくて、ところどころのハーモニーの生かし方が効いている。この曲は決して複雑でも何でもないが、それだけに、指揮者が全体を把握していることがよくわかる。これに比べると、いや、比べなくとも、世評高いケルテスなどはいかにも粗い。

 この演奏には惚れました。第29番は好きでいろいろな演奏を聴いてきたが、目下、ベームとウィーン・フィル、西脇とリング・オケが私にとっての2トップである。」    

      「許 光俊の言いたい放題」HMVサイト「スーパーアマチュアの時代」(抜粋)

 

 許さんはこのコラムの中で、今世界で最も注目を浴びている次期音楽監督キリル・ペトレンコ指揮するベルリン・フィルを先月本拠地で聴き、「うまい連中がバリバリ弾きまくるのを楽しむ猛獣ショー」とバッサリ切り捨てました。

 是非、全文をお読みください。          

 http://www.hmv.co.jp/en/news/article/1704110021/

  

 賛否両論があるのは当然のことであり、実は、批評や評論にはあまり期待をしていませんでしたが、デア・リング東京オーケストラの演奏の本質を、多くの評者の方に聴き取っていただけたのは本当に嬉しく、幸せなことです。

 

 

 

 

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