内田光子ピアノ・リサイタル2021を聴いて

 内田光子ピアノ・リサイタルをサントリーホールで聴いた。(20211025日)

昨年はコロナ禍のためにマーラー・チェンバー・オーケストラとの共演がキャンセルになったが、今年はオーケストラとの共演ではないが無事開催された。

曲はシューベルトの4つの即興曲 D. 935 Op.142 よりとベートーヴェンのディアベッリのワルツによる33の変奏曲作品120

 

 内田光子さんは1983年に当時在籍していたフィリップス・クラシックスと契約したので、以後20年ほど来日するごとに間近に接することができ、大きな影響を受けた。

2006年の来日公演で、ベートーヴェン最晩年のピアノ・ソナタ(第30、第31、第32番)を演奏したおりの読売新聞の「楽譜が唯一の規範」が見出し、副題「演奏家の個性 いらない」という記事で、「そもそも作品自体がオリジナル。だから演奏家が『個性』を付け加える必要はまったくない。それはお化粧です。私はお化粧は嫌い。不要なものを徹底的に削ぎ落として、必要不可欠な音だけを残したい」と語ったが、同じく最晩年のディアベッリ変奏曲でもまさに同じ姿勢で演奏された。

 内田さんは「「私はピアノを弾いているのではなく聴いている」とよく言っていたが、

響きがより深く自然になり、弱音も強音もまさにホールの隅々まで響いており、これぞ、まさに空間力!余計なものが一切削ぎ落とされた宇宙空間を創出していた。